睡眠薬をやめる方法、工夫

1)まず、当然のことですが、不眠症をしっかり治さなくては減薬に取りかかれません。ガイドライン的には最低2カ月は心配なく眠れる状態(寛解状態)を続けてから休薬にチャレンジするのがよいでしょう。

2)減薬に取りかかる前に睡眠習慣指導ができればベターです。睡眠指導を併用することで、以下にご紹介する漸減法の成功率が格段に向上します。

3)減薬法は漸減法がもっとも簡便で、安全で、効果的です。通常は2分の1錠ずつ、不安が強いケースでは4分の1錠ずつ、各ステップに2週間から4週間かけてsmall step downさせます。減薬が進んで2分の1錠になったら、その次は4分の1錠にします。スムーズに減薬できてもスピードアップしない方が無難です。

4)各ステップの最初の1週間はほぼ間違いなく睡眠感が悪化します。前回解説したように、身体依存が形成されていなくても、「睡眠薬を減らした……」と意識しただけで心理的不眠が出現します。各ステップを乗り越えるごとに不安も緩和され自信がついてきます。また、(プラセボと有意差がなかった)新規睡眠薬Rも、少なくともこの心理的不眠部分は軽減してくれるでしょう。

5)強い離脱性不眠(反跳性不眠)が出現した場合、特に何日も持続する場合には、いったん元の処方に戻して再チャレンジを目指しましょう。ベンゾジアゼピン受容体作動薬に対する身体依存が形成されている可能性があるため、いったん作用時間の長いベンゾジアゼピン受容体作動薬に置換するなどの工夫が必要かもしれません。このようなケースは精神科医にコンサルトするのもよいでしょう。

6)最後の4分の1錠がやめられないという患者さんもいます。もう薬理学的には休薬したのも同然なのですが、無理に中止させると不安が高じて不眠が再燃します。「お守りとして枕元に置いておき、必要なら服用してください」などと説明し、頓用に切り替えると、いつのまにか不安感との折り合いを付けて中止できる方が多いようです。

 睡眠薬を絶対やめる、やめなくてはダメだと気負うとかえってやめにくくなります。「たまに服用する程度なら問題なし」「寝付けなかったらいつでも服用してよい」と、肩の力を抜くように指導してください。また、完全に休薬できなくても、少量を長期に服用して日中元気に過ごすという選択肢もあると、セーフティーネットを張っておくことも大事です。実際、生活習慣病、精神疾患、痙攣性疾患など、睡眠の確保が治療に必要な持病を持つ患者さんでは、安全な長期処方が望ましいとされています。