東芝、非人道的リストラを元社員が告発…PCと仕事没収で延々「反省文書き」強制し解雇

「株主の皆様、ステークホルダーの皆様には心からお詫びいたします」
 6月28日に行われた東芝の株主総会では、決算報告ができないこと、東証1部から2部に降格となることを報告した後、議長を務める綱川智社長が謝罪すると、壇上に並んだ役員一同も一斉に頭を下げた。
 東芝は同日午前10時より、幕張メッセ国際展示場9ホールで、第178期定時株主総会を開いた。36万6030名の株主のうち984名が出席。2016年と17年の業務見通しなどが説明された後、メモリー事業の売却に関する説明がされる。売却に反対する協業先の米ウエスタン・デジタル(WD)が米裁判所に訴訟を起こしていることについて、「不当な妨害だ」と綱川社長は語気を強めた。
17年までは「危機的状況」、18年から「安定成長」になるという、東芝再生へのロードマップが示された後、株主との質疑応答となった。
 東芝の経営危機は、米原子炉メーカー、ウエスチングハウス(WH)買収が起因であることはこれまで報じられているとおりだ。
「原子力から撤退し、再生エネルギーにシフトしていくべきでしょう」
 そんな声が何人もの株主から上がった。
「日本は資源輸入国であり、電気の安定供給、温室効果ガスの削減のためにも原発の再稼働に努めていきます」
 会社側の回答は型どおりのもの。同様の質問を何度もされたためか、最後には「エネルギーの問題を、私1人で決められるものではありません」と、原子力担当の畠澤守常務が答えたのが印象的であった。
「放射能測地数値が自治体によってバラバラです。東芝は道義的な責任として、きちんと信頼できるような数値が出るよう関わるべきではないでしょうか」という質問もあった。
「弊社は放射能測定の技術は持っているが、従業員が過度に被曝しないよう、仲間を守るために使っています。一般の環境中の放射能については、環境省や経産省の指導の下、しかるべき団体が行うべきもので、私どもがやるべきことではありません」と畠澤常務は答えた。

 原子力関連では、こんな質問もあった。
「法律違反を国が承認したことで、福島原発事故が起きました。その衝撃は世界に及び、ドイツは脱原発に舵を切り、WHの損失もその余波で生じたものです。東芝には、福島原発事故の責任はありません。WHの損失は国が賠償すべです」
「私たちの考えを代弁していただき、ありがとうございます。WHの問題については、誠心誠意、議論を交わしている最中でございます」と畠澤常務は答えた。
「反省文を書かされ解雇」

メモリー事業の売却に関する質問も、何名もの株主から上がる。
「優良な事業なのに、なぜ売るのか。高く売れるところから売っているんじゃないですか」
「研究開発や設備投資などへの投資が続けていけないことからの売却です」と綱川社長は答えた。
「売却先に韓国のSKハイニックスが入っているが、技術を得るというメリットがなければ、入らないのではないか」と技術流出を心配する株主もいた。
「SKハイニックスは米ベインキャピタルに融資するという関係です」と成毛康雄副社長は答えた。
 東芝のグループ会社に勤めていた株主からは、切実な訴えがあった。
「セクハラ、パワハラを受け、1年間、パソコンも仕事も取り上げられ、ずっと反省文を書かされ解雇されました。このことについて、きちんと回答してください」
「グループ会社の個別の事案であり、プライバシーにも関わることなので、回答は差し控えさせていただきます」と牛尾文昭専務は答えた。「上にものを言って解雇された人間を戻すことが、会社を強くするのではないか」と別の株主からの発言があった。牛尾専務は同様の答えを繰り返した。
「東芝はもはや三流以下の会社でしょう。それなのに役員が多すぎます。壇上に並んでるだけで発言もしないような役員はいらない。4分の1以下にしてもらいたい」という発言もあった。「執行役員人事委員会で、役員の選任は適正に行われています」と牛尾専務は答えた。
29名の質問を受けた後、議案の採決が行われる。第1号議案は、取締役9名選任の件。第2号議案は、社内カンパニーなどを、それぞれ東芝の完全子会社に吸収分割する、吸収分割契約承認の件。どちらも可決され、午後1時過ぎ、株主総会は閉会した。