調査によると、「純粋白人」は3割ほどしかいなかった

米国バージニア州で「白人至上主義者」らと反対派の衝突事件で多数の死傷者が出たが、騒動の発端となった白人至上主義者が自ら「純粋白人(欧州系白人)」を証明するため、自主的に遺伝子検査を次々と実施した。その結果は白人民族主義者のユーザーが集まるサイトで個々人レベルで報告されているが、それらの発言を分析した調査結果が、2017年8月14日に米研究機関から発表された。

調査によると、「純粋白人」は3割ほどしかいなかった。思わぬ結果を突き付けられ困惑する白人至上主義者も少なくないとされ、中には望む結果が出るまで検査を続けるという人までいるという。

100%欧州系の白人かを検査すると
調査はデータ分析から社会・人権問題の解決を模索するニューヨーク市の研究機関、データ・社会調査研究所とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の社会・遺伝学研究所が共同で行った。結果は8月14日に開催された米社会学会(ASA)年次総会で発表され、17日にはオープンアクセスの学術誌でも発表されている。

調査方法は、「Stormfront(ストームフロント)」という白人至上主義者やネオナチを標榜するユーザーが集まるインターネット掲示板の書き込みを収集し、遺伝子検査を受けたユーザーがどのような結果だったのか解析するというものだ。

「ストームフロント」を対象とした理由について、研究者のひとりであるアーロン・パノフスキー氏は米ネットメディア「STATnews」の取材に対し、

「ストームフロントはメンバーになりたい場合、ユダヤ人を除く100%欧州系の白人でなければならないと主張しており、自分がメンバーであると証明するために遺伝子検査を受けるユーザーの数が多かった」
と答えている。

こうしたサイトだからこそ、「100%白人」との結果が出た場合ユーザーは声高に主張する。逆に、検査を受けたにもかかわらず結果に言及してない場合は望ましい結果ではなかったと判断したという。

約3万人、1200万件の書き込みを解析した結果、「純粋な白人」との検査結果を得ていたのは全体の30%未満で、残りの70%以上は結果を否定するか、検査を受けたと推測できるのに何も書き込んでいなかった。

何も書き込みをしていなかったユーザーを「純粋白人」でなかったと判定することが適当がどうか議論が分かれる面もある。そこで明確に検査結果に触れている人の発言だけに絞ると、対象となるのは約3000人。この3000人中「純粋な白人」だったと書き込んでいたのは3分の1で、3分の2は「100%欧州系の白人」ではなかった。正直に検査結果を明かしたユーザーは「自分は86%が欧州系白人、14%はサハラ以南のアフリカ系だった」などと書き込んでいた。

「純粋白人」でない結果の人でも排除しないという興味深い現象が
納得がいかない結果が出たユーザーは「検査の結果よりも、5代以上続く白人の家系であるという自分の事実の方が正しい」と主張、より白人種の遺伝情報が多いという結果が出るまで検査を受け続けるなど、さまざまな反応を見せているようだ。

前出のパノフスキー氏によると、興味深いことに遺伝子検査の結果「純粋な白人ではない」とされたユーザーが「純粋な白人」とされたユーザーや、検査結果を明らかにしていないユーザーから拒絶されることはないという。

「『純粋な白人』を遺伝的に厳密に追求すれば、彼らは完全な少数派に陥ります。多少の矛盾があっても白人的な要素を見つけて『純粋な白人』と認めたほうが都合はいいのでしょう」
遺伝子検査を提供しているある企業は、調査の中で「これだけ多様化している世界の中で、遺伝的な祖先がある特定の地政学的境界に基づいた地域に限定されるなどほとんどないだろう」と答えている。