いったい何があったのか。悪質タックル問題をめぐり、日本大学アメフト部の選手一同が29日に発表した声明文は、当初の「監督・コーチの嘘を暴く」「コーチ陣の総退陣を求める」といった触れ込みから大幅にトーンダウンしたものだった。
声明文で、現役部員らは《チームメートがとても追い詰められた状態になっていたにもかかわらず、手助けすることができなかった私たちの責任はとても重い》《監督やコーチに頼り切りになり、その指示に盲目的に従ってきてしまいました》と反省の念を表明した。
内田正人前監督(62)ら首脳陣を指弾せず悪質タックルの真相への言及もなし。《日本大学アメリカンフットボール部全体が生まれ変わる必要があることを自覚しています》という表現こそあったが、コーチ陣の退陣を直接求める文言もなかった。「告発文」の要素がない「反省文」だった。
スポーツライターの小林信也氏は「丹念に読んだはずが、内容が思い出せない。それくらいはっきりしない声明だった」と印象を述べる。
関係者からは指導陣に厳重処分が下りたものの、部員らの有力な“告発”が得られなかったことに落胆の声も挙がる。
声明文作成へミーティングを重ねた部員らに対して、コーチが「自分たちの首をしめることになる」と圧力をかけていたとも報じられていた。スポーツ推薦や指定校推薦などの形態で入学した場合には、途中退部すれば出身高校の指定校取り消しなどの恐れもあり、慎重にふるまわざるをえない側面もある。
前出の小林氏は「選手にはもっと首脳陣に対して生の声をぶつけてほしかった。選手を突き動かすリーダーシップを持った人物がいなかったのではないか。コーチ陣の悪い部分にぶつかり、学生が組織づくりの側面を学ぶことも大学スポーツだ」と指摘した。
内田前監督の呪縛は解かれないままなのか。